ボクシングWBC世界バンタム級チャンピオン、山中慎介が世界の10位に選ばれました。
アメリカのボクシング専門誌『リングママガジン』が独自に選定したパウンド・フォー・パウンドの世界10傑で、山中選手が日本人として初めて、10位以内にランクされたのです。
※パウンド・フォー・パウンドとは
異なる階級の選手を比較、対比する方法を指し示すものとして1950年代初期に『リング』誌の初代編集長ナット・フライシャーによって造られた用語であり、その後、階級や王座認定団体、王座そのものが増えると、単に選手の優れた才能や能力を説明するために用いられるようになった。ボクシングや総合格闘技、キックボクシングなどの格闘技の世界で、仮に体重差がなかった場合に最強と目されるチャンピオンに与えられる称号。
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このように、パウンド・フォー・パウンドは、体重差を考えずに誰が一番世界で強いかを示すものです。体重差があれば、パンチ力などに圧倒的な差が出ますので、技術力、パンチ力、闘争心などが抜きん出て強い選手のみに与えられる名誉ある称号なのです。
ボクシングを知らない人には、何のことかよくわからないと思いますが、これは驚くべき快挙です。10傑の中には、錚々たる選手がズラリと揃っています。
これが世界10傑の顔ぶれだ
今回発表された10傑は以下のとおり。
http://ringtv.craveonline.com/ratings
1位 メイウェザー
2位 ローマン・ゴンサレス(ロマゴン)
3位 クリチコ
4位 ゴロフキン
5位 リゴンドー
6位 パッキャオ
7位 カール・フローチ
8位 セルゲイ・コバレフ
9位 テレンス・クロフォード
10位 山中慎介
日本でもお馴染みの世界の強豪がズラリと揃っている中で、山中選手が10位ですよ!
1位はメイウェザーですが、先日の試合でもしパッキャオが勝っていれば、順位は入れ替わっていたかもしれません。メイウェザーはパンチ力とかKOとかじゃなくて、圧倒的なスピードが評価されています。
先日のパッキャオ戦は私も見ました。「面白くなかった」という意見がマスコミ始め多かったと思いますが、私はすごく高レベルなボクシングで見応え十分でした。
コーナーに追い込まれても、するりと簡単に抜け出すステップワーク。圧倒的なカウンター技術。パッキャオがいかに追い詰めようとしても、闘牛士ばりにヒラリヒラリと見事なディフェンス力でかわしていくメイウェザーのボクシングは、確かにKOという魅力は薄れますが、ボクシングのレベルの高さを魅せつけてくれました。
山中慎介が世界の10傑に選ばれた理由
山中慎介がパウンド・フォー・パウンドの10傑に選ばれた理由として、私が考えられるのはやはりWBC王座を8連続防衛していること。
8度の防衛戦で6回もKO勝ち(TKO含む)していること。しかもその内容が圧倒的な強さを見せつけていることが挙げられます。
しかし、連続防衛しているチャンピオンはまだ他にいる中、何故山中選手が選ばれたのか?
一番の理由は「神の左」と称される強烈無比の左ストレートでしょう。とにかく、その破壊力は恐ろしいほど。バンタム級では世界ナンバーワンの破壊力じゃないでしょうか。
山中慎介の「神の左」はなぜそんなに強く、なぜそんなに当たるのか?
どれだけ強烈か、動画を見てみましょう。
いやはや、すごい破壊力です。山中選手は、そんなに筋肉ムキムキの体をいしている訳ではありません。一見すると、ハードパンチャーには見えません。
ではなぜ、山中選手の左ストレートは「神」とまで称される破壊力があるのでしょうか?
また、対戦相手は十分に山中選手の左ストレートを研究し、警戒しているはずです。それなのに、なぜあんなにも「当たる」のでしょうか?その秘密を探ってみましょう。
1.破壊力の秘密
山中選手の左ストレートを動画や画像で見てみると、次のことが分かりました。
- 体の軸がぶれずに、まっすぐ基本通りのストレート
- 前足に十分なウエイトを乗せることで、パンチに異常な破壊力を乗せている
上記が、あのパンチ力を生んでいるのだと思います。決して、腕力で倒しているわけではなく、ウエイトをパンチに完全に乗せているからこその破壊力。
また、体軸がブレずに、最短の軌道でパンチが出ています。対戦相手にしたら、「左がいきなり飛んでくる」という風に感じるんじゃないでしょうか。
山中選手の左ストレートは、タイミングで倒すパンチではなく、最短軌道を最速で、ウエイトを完全に乗せて倒すパンチです。
パンチがブレることがなく、非常に正確に狙った箇所に当てます。
相手がガードをしていても、ガードの隙間をついて強烈なストレートが打ち込まれるわけです。
2.当たる秘密
以前テレビで紹介されていましたが、山中選手はフェイントが非常に巧みです。特に、目のフェイント。
「上を打つぞ」と目でフェイントをかけて、ボディに左ストレート。その逆もしかり。
なので、左ボディストレートもよく当たります。
相手にすれば、目でフェイントをかけられながら、正確無比のストレートが予期せぬ形で飛んでくるので、避けようがありません。
しかも、最短軌道のスピードで飛んでくるパンチです。左が来ると分かっていながらパンチを受けてしまうのは、巧みなフェイントを織り交ぜながらパンチを飛ばすからだと思います。
山中慎介は、世界へ打って出られるか?
パウンド・フォー・パウンドの10傑は、山中選手以外はすべてアメリカで試合をしたことがあり、知名度があります。
その中で山中選手は日本でしか試合をしたことがないのに選ばれるとは、本当に快挙です。
しかも、中重量級の面々がズラリと揃っている中で、です。(ロマゴンはフライ級ですが、あれはまさに別格です)
8連続防衛しているとはいえ、アメリカを主戦場としない限りは世界的には無名のチャンピオンです。これは、内山選手にも言えることですが。
恐ろしいほどの実力と実績があるのに、世界的に無名というのは、日本のボクシングファンとしては耐え難いほど悔しいです。やはり、アメリカで試合をすべきだし、山中選手も海外志向が強いので、ぜひ帝拳ジムには頑張ってもらって、海外で試合を組んで欲しいです。
今回、パウンド・フォー・パウンドの10傑に選ばれたことで、世界のボクシング界から注目される存在になるはず。
1つ上のスーパーバンタム級には、5位に選ばれたあのリゴンドーがいます。
山中慎介VSリゴンドー。
なんとか実現できないかな?そうなると一気に世界のスターダムにのし上がれると思いますし、ワクワクするカードだと思うんですがね。実現不可能な夢なんでしょうか。いや、ボクシングファンとすれば、是非とも実現してもらいたい夢であると思います。